1 盲導犬と盲導犬ユーザー(使用者)

盲導犬と盲導犬ユーザー盲導犬の育成は、視覚障害リハビリテーションの一つとしておこなわれています。 そこでまず、“盲導犬とは?”、“盲導犬使用者とは?”といった点を中心に考えてみましょう。
なおこのコラムは「財団法人日本盲導犬協会」の提供情報を参照しながら作成しています。盲導犬育成団体としては、国家公安委員会の指定法人となっている団体が全国に9つあり、日本盲導犬協会はその中で厚生労働省が設立を認可している2団体のうちの一つです。(他の7団体は地方自治体が法人格を認可しています。)

1-1 盲導犬とは

「盲導犬」の語源は「盲人を誘導する犬」にあります。そして盲導犬とは、生活を共にする視覚障害者である盲導犬ユーザー(使用者)の歩行を、その歩行自体と周辺環境に支障がないかたちで円滑に誘導するための訓練を受け、そうしたはたらきを国家公安委員会の指定する盲導犬育成団体(法人)が訓練した、あるいは認定された犬のことをいいます(*1)。

ただしそのはたらきの発揮は、訓練された盲導犬のみではなく、盲導犬歩行指導を受けた盲導犬ユーザー(使用者)との信頼関係によって支えられており、さらにその関係は、盲導犬と盲導犬ユーザーが生活を共にする中で形成される互いへの親愛によって支えられています。
盲導犬と盲導犬ユーザーは、生活の喜びを分かち合う、たいせつなパートナーです。

盲導犬の犬種は、ラブラドール・レトリーバーとゴールデン・レトリーバー、そして両犬種の第一世代交配犬(F1)が多くを占め、中でも最多であるのが盲導犬に最適なラブラドール・レトリーバーです。

ラブラドール・レトリーバーが盲導犬に最適である理由は、まず大型犬である、そのサイズや力加減がハーネス(専用の胴輪)を通じて、人に動きを伝達したり、人を停止させたりすることにかなっているという点にあります。加えて、鳥猟犬系統にある性格上、人に従順(柔順)で、人との活動に喜びをえることができ、さらに警戒心や闘争心をもたない穏和なところが、盲導犬ユーザーをはじめ外出時の周囲の人々にも受け入れられやすいという点も理由の一つです。
周囲の人々への受け入れられやすさの点では、ラブラドール・レトリーバーの柔和な顔立ちもだいじなポイントです。

盲導犬の性別は、そのはたらきを左右するものではなく、オス・メスどちらも盲導犬として活躍しています。

*1: 視覚に障害者ある方と生活しているだけの犬、また視覚に障害者ある方が任意で自らの歩行支援に役立てている犬は、法律上の盲導犬に該当しません。

1-2 盲導犬のはたらき

盲導犬は、盲導犬ユーザーと自らをつなぐハーネスを着けて盲導犬使用者を誘導します。
誘導は、盲導犬使用者をひっぱるのではなく、盲導犬使用者の横・半歩前を歩く自らの動きを通じて盲導犬ユーザーに周囲の状況を伝達するかたちでおこなわれます。
そしてこうしたはたらきの発揮には、盲導犬ユーザーからの「コマンド」(命令語)に従う行動と、その中での自発的な行動があります。

「コマンド」の多くには、非日本語のうち日本人に親しみがある英語が用いられています。「コマンド」に非日本語が用いられる理由は、盲導犬ユーザーの性別や方言に関連する固有の言いまわしが、盲導犬に訓練された「コマンド」との間にズレを生じさせてしまうことを避ける点と、街中などで周囲の会話と「コマンド」の発声が混ざり、盲導犬だけでなく周囲の人々にも困惑が起きることを避けるという点にあります。

コマンドの内容には、直接的に行動を指示する「…をしなさい」の類と、間接的に行動を指示する「…のそばにいくための何かをしなさい」の類のほか、行動を評価する意味でとてもたいせつな「今していることはいいね」と「今していることはやめようね」(「今…をしていないのはやめようね」も含みます)の類があります。

盲導犬はこうしたコマンドに従うなかで、さらに自発的に、歩行場所の段差や交差の前での停止と、歩行場所の足元や盲導犬ユーザーの上半身が当たる障害物の前での停止や回避をおこないます。このことは盲導犬自らが歩行を停止することはあっても開始することはないという側面を含む一方、たとえ歩行を開始するコマンドが出ても、車の接近などで周囲が危険な状況にある場合には、歩行を(停止する以前に)開始しない「利口な不服従」もおこないます。

また歩行場所の段差や交差、障害物をとらえる盲導犬の能力は、それら以外のものには関心をもたないという点でも発揮されます。もしも街中にあるものに逐一関心をもつと、そうした盲導犬の動き自体が歩行の障害になってしまうからです。大きな音などにおどろいたりすることでも同様の問題が起きてしまうので、盲導犬はそれらも無視します。

1-3 盲導犬の生活

盲導犬は日頃、主人である盲導犬ユーザーの自宅で、その深い愛情を受けながら生活しており、日常の世話も盲導犬ユーザーから受けています。

盲導犬自身は、ハーネスが着けられることで誘導の「仕事」に就くことを理解し、ハーネスが着けられていない場合は、自宅にある犬用のハウス(ケージ)でのんびりしていたり、盲導犬ユーザーにあまえたりしています。また食事や排便の際にもハーネスは着けられていません。
ただしハーネスが着けられていないときでも、人と暮らすために身に付けた習慣はしっかりと守ります。

1-4 盲導犬ユーザー(使用者)とは

盲導犬ユーザーとは、視覚障害者のうち、盲導犬育成団体による盲導犬歩行指導を修了し、貸与された盲導犬と生活しながら、自らの歩行の誘導のために盲導犬を使用している人のことをいいます。
盲導犬との歩行は、その歩行自体と周辺環境に支障がないかたちで円滑におこなわれます。歩行のスタイルは、盲導犬の横・半歩後ろを歩く盲導犬ユーザーがコマンドによって盲導犬に行動を指示し、自らの手と盲導犬をつなぐハーネスを通じて盲導犬の動きをとらえ、周囲の状況を確認しながら歩行するという体勢をとります。

また盲導犬ユーザーは日頃から盲導犬に、お互いへの信頼につながる深い愛情をそそぎ、食事や排便などの管理による健康の確認と維持もおこなっています。加えて、外出時の周囲への配慮としての盲導犬の世話もしています。たとえばブラッシングは、盲導犬の健康状態を確認したり、自宅内に落ちる毛を減らすための世話であると同時に、外出時に周囲に落ちる毛を少なくするための世話でもあります。同様の配慮には、外出時の着衣なども含まれます(*3)。

視覚の障害には、視力上の全盲や弱視、視野上の狭窄や暗点などがあり、障害をもった時期も、先天的な場合や、病気や事故による中途の場合などさまざまです。

視覚障害リハビリテーションとは、視覚をとりもどすのではなく、視覚をおぎないながら充実した日常生活をおくるためのリハビリテーションで、その歩行面では多くの視覚障害者が、保持している知覚を活かしながら、点字ブロックや音声ガイドという環境と、白杖(*4)という道具をたよりに歩行する指導を受けていますが、盲導犬ユーザーは白杖に代えて盲導犬を使用しています。

盲導犬を使用するには、盲導犬歩行指導を受けたり、盲導犬の世話やそれにともなう経済的負担などがあります。しかし、盲導犬を使用することによって、犬の目を使って障害物や段差の確認をすることができるようになります。
そして、こうしたかたちで歩行時の注意を盲導犬と分担することで緊張や疲労が減り、歩行の楽しみや歩行への意欲が増すことによって自由に歩行できる行動圏を広げることができます。

ただし、交差点の認識は可能な盲導犬も、交通信号表示の識別は困難であるため、交通信号の判断は盲人用信号の音やその周囲の音から盲導犬ユーザー自身がとらえます。したがって、アイドリングをかけたままの車が目の前(進行方向に対して横)に止まっている場合、盲導犬ユーザーは自分の進行方向が青であると勘違いをしてしまうという危険もあります。
さらに、盲導犬は一部の目標物(目的物)までの誘導は可能ですが、最終目的地までの歩行経路の案内はできないので、歩行経路と目的地は盲導犬ユーザーがとらえています。

なお盲導犬の貸与条件は、原則として18歳以上で、視覚障害者手帳を保有していること、自らが責任をもって管理する盲導犬との積極的な外出をのぞみ、それが可能な身体能力があること、約4週間の合宿を伴う訓練(「共同訓練」)が受けられることなどであり、これらを満たす人は、盲導犬育成団体による面接を受け、待機中の盲導犬希望者(盲導犬使用希望者)として登録されます。(*5)

*3: 盲導犬が着る服には、盲導犬ユーザーが着せやすく、盲導犬自身も動きやすいものや、着衣による過度の体温上昇が起きないように工夫されたものなどがあります
*4: 地表の状況をさぐるための専用の白い杖
*5: 財団法人日本盲導犬協会を含む一部の育成団体では、無償貸与となっています

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